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Yagiyama  Healthscience institute
レポート.4


青少年のトレーニングマニュアル (c)2003

やぎやま身体技術研究所 小林昌彦 BCSc.


第一章 成長とトレーニング

この章では「アスリートが小学生のうちにやっておくべきこと」「アスリートが中学生のうちにやっておくべきこと」「アスリートが高校生のうちにやっておく べきこと」を、各年代の身体発達的な特徴をもとにまとめた。青少年のトレーニングを考えるにあたって、各年代の身体の発達的特徴を知ることは必要不可欠 だ。

 

 

〔1〕身体発達の年代別特徴

「小学生に筋力トレーニングが必要か?」という論議は多い。

また中学生から高校生にかけて「いつ筋トレを開始すべきなのか?」という疑問も多い。

身体の各器官は均等に成長するわけではなく、年代別に最も発達する器官というのがおおよそ決まっている。ということは当然、各年代のスポーツ選手によって 「やるべきこと」は違ってくるわけで、指導者のみならずアスリート自身がその特徴を知らずして、競技能力の向上は望めない。

「アスリートが○学生のうちにやっておくべきこと」を考えるにあたって、まずは少年から大人になる成長曲線をグラフで見てみよう。



表1:成長曲線


疲労からの回復力につながるリンパ系に至っては、十代前半が人生の中で最も活動的で成人の2倍近いという特徴がある。いわゆる「寝れば治る」時期である。

神経系の発育は早く、7〜12歳までにほぼ完成する。この小学生の年代は、中学生以上であるティーンネイジTeen Ageに対してゴールデンエイジGolden Ageと呼ばれていて、まだ筋力や心肺機能は発達していない。

またティーンネイジ以降の生殖器系の発達は、男性アスリートにとって最も男性ホルモンが活発になる時期であるため、最も筋肉の発達する時期となる。逆に女 性アスリートにとっては残酷だが筋肉を発達させにくくなる時期として受け入れるべきである。

後に詳細を述べるが、ティーンネイジ前半は筋力の発達は著しいが、骨端軟骨が完全に骨化しておらず、大人の骨腱構造と比べると不安定なことは否めない。骨 格が完全に完成するのはティーンネイジ後半の17〜18歳になってからである。

おおむね小学生、中学生、高校生に分けて特徴を表にまとめてみよう。
時期 発達的特徴 必要な運動
小学生期 神経系 Agility=俊敏性
Coordination=運動連鎖
中学生期 呼吸循環器系 持久力トレーニング 、筋力トレーニング
高校生期 生殖器系 筋力トレーニング (マシン含む)
表2:年代別発達的特徴



〔2〕小学生期

アスリートが小学生期に発達させておかなければいけないのは「小脳」である。

まだ筋力は発達していない反面、神経系の発達が著しい時期なので、各スポーツ固有の技術訓練を繰り返すよりも、いろんな運動を経験させることが最も重要で ある。複合的な運動によって、俊敏性と運動神経の協調性を養うことが、アスリートの将来にとって有益である。


1)小脳の発達

ゴールデンエイジに完成する神経系で、アスリートにとって重要なのは小脳である。人間のほとんどの運動は主に小脳で管理されていて、大脳が「意識的」な運 動経路なら、小脳は「無意識」の運動経路といえる。

例えばボールが飛んできて、腕を伸ばして捕球しようとする時、大脳から単純な「腕を伸ばせ」という指令が筋肉に送られるのだが、その動きを調和するために 小脳がはたらき、「どの位置に」「どのくらいのタイミングで」と微調整する。私たちが普段、何となく、無意識に行っている動作にも小脳は必ず関わってい る。

2歳くらいの子にボールを投げてやると、見ているだけで、まず捕ろうとはしない。まだ視覚で確認した物体と、自分の運動とが結びついていないので、自分の ほうに飛んでくるボールは見えていても、それによって手を出すということができない。大脳(意識運動)が未発達なのだ。

4〜5歳ぐらいになると、飛んでくるボールに対して手を出すようになるが、まだ捕れない。視覚で物体を確認し、ボールにあわせて手を出すようになるのは、 意識運動である大脳が発達したからである。でも、まだ捕れないのは、小脳が未発達で運動の調和がとれないからだ。

小脳の働きによる運動調和が一気に発達し完成するのが、ゴールデンエイジとよばれる小学生7歳〜12歳なのである。この年代になるとようやく、飛んでくる ボールを認識する(立体視覚認識)、捕ろうと手を出す(意識運動:大脳)、動きを微調整する(無意識運動:小脳)という、一連の神経連鎖が完成するわけ だ。

 
2)運動神経は小脳が決める

ここで脳神経系について細かい説明をするつもりはないが、小脳のはたらきが人間の運動にとっていかに重要であるかということを分かってほしい。

4〜5歳で発達する大脳の意識運動の際、筋肉へ大脳から「縮め」という指令が1本の神経線維で行われているとしたら、その動作を完結させるために小脳から 脊髄に動員される神経線維は40本だといわれている。たった一つの「腕を曲げる」という指令に対して、大脳の40倍も複雑な働きを小脳が行っているわけ だ。

この小脳の発達を促進するために、小学生のうちは色々なスポーツを経験させることが最も重要だといわれている。

野球、サッカーなど特定の競技に偏らず、マット運動、鉄棒、登り棒(綱)、雲梯(うんてい)、縄跳び、バランスボールエクササイズ、フィールドアスレチッ クなど幅広く運動する、また色々な競技を経験することが、神経系の発達、特に小脳の発達を促進し、将来的に価値の高い運動能力を身につける基礎となるの だ。

ある体育教師から「リトルリーグのレギュラー選手に、小学校でマット運動をさせたら、なんと前転さえできなかった」という話を聞いた。この子は野球しか やっていないために、単に「野球の反応」を身体が覚えているだけで、真の運動神経が発達していないわけだ。

これは実に重要な問題であり、日本のスポーツが国際的に低いレベルにとどまっている現状の元凶であろう。

日本は子供に単一競技を極めさせる技術偏重の国民性がある。

「野球の基礎は小学生のうちに・・・」などというような発想であるが、運動能力の発達を考えれば、非常に無理がある考え方である。

「野球の基礎」「サッカーの基礎」などというのは、原始的な子供の運動にとっての「応用」であり、人間の運動の基礎とはいえないのだ。

型にはめたスポーツではなく、小学生のうちは「外で遊ぶ」ことが基礎であり、遊ぶことによって自然に小脳が発達し、運動能力を養うのだ。「雲梯さえまとも にできない子に野球の基礎もクソもない!」というのが結論だろう。

動きすぎて母親を困らせるような子は、たいてい運動神経が良い。

一般的に「よく動く子」「じっとしていられない子」は、日常的に自然にいろんな運動に親しみ、結果小脳の発達が目覚ましい。「負けず嫌いな子」も、負けた くない気持ちから自然に苦手なことに取り組み、自分自身の運動能力の欠点を克服する結果となる。また彼らは、意味もなくどこかから飛び降りてみたり、崖に 上ってみたり、走り回ったり、幼少期から危険なことを好んで(?)する。このように母親が悲鳴を上げるぐらいの「よく動く子」が、おおよそ「運動神経がい い」と言われるのは当然のことで、小学生期にとってもっとも重要な要素なのだ。

 
3)Agility&Coordination

小学生期のトレーニングは、おおまかに分けるとAgility(俊敏性)とCoordination(協調性)に重点を置くべきである。

アジリティ(Agility)は俊敏性のことであるが、具体的には運動中の動作の「切り替え」の意味が強い。運動というのは動から静に、そしてすぐに静か ら動に、というように連続した切り替えを行うことによって完結する。ここでいう俊敏性とは筋肉の瞬発力ではなく、神経系の切り替え能力「動きの変化の速 さ」ととらえたほうがイメージしやすいだろう。

またコーディネーション(Coordination)とは、運動中の筋肉連鎖に重点を置き、複数のユニットを連続して使う動作のことをいう。複数ユニット の連鎖、と表現すると難しいが、実際の日常動作や遊びの運動は全てコーディネーションだと考えればよい。

身体の動きは筋肉の連動によって行われるが、一つの動作の中で関係する筋肉が同時に動くわけではない。最初に静止状態から動き出すための筋肉が身体を安定 させながら始動する、次に加速させる筋肉、加速した運動を維持する筋肉、とそれぞれの役割を持ち連動している。

椅子に座っている人の眉間を指で正面から押さえると、たった指一本の力によって立ち上がれなくなる。これは人間が椅子から立ち上がる時に、前方への頭の体 重移動から始動することを示している。その始動を止められると、たとえ指一本の力でも立ち上がれなくなる。

1.始動 スピードはないが安定性とパワーが抜群の筋肉 1速ギア
2.加速 スピードとパワーがあり運動を加速させる筋肉 加速ギア
3.定速 スピードが抜群で加速した状態で活動する筋肉 トップギア
表3:筋肉連動のFiring Sequence

例えるならば、自動車の1速(始動)ギア→加速ギア→トップ(定速)ギアの関係に似ている。座っている状態で眉間を押さえられることは、1速ギアが使えな くなることと等しく、静止している状態から加速ギアで始動しようとするため動き出せないのだ。動作は日常的に複数の筋肉の収縮によって行われるが、各「筋 肉が収縮する順番」が決まっているというわけだ。運動を加速させるための正常な順番を持つ筋肉連動はFiring Sequence(発火機序)と呼ばれており、神経筋連動とでも言うべき、この能力を向上させるのが、コーディネーション・トレーニングと呼ばれる協調性 トレーニングなのだ。(→コラム『力を抜けの謎』参照)

簡単に言えば、アジリティはどれだけ素早くギアチェンジができるか?であり、コーディネーションはどれだけスムーズにギアチェンジができるかを表してい る。

また「静」の状態から「動」へと切り替わるとき、動き始めから加速していく過程で姿勢の変化によって体勢の崩れが生じる。この崩れを制御し安定した運動を 行うためには支持筋の安定、神経系のこんとろーるによるボディバランスも重要であり、アジリティ&コンディショニングには後に述べる支持筋のバラ ンストレーニングも含まれる。

 
4)技術は後からついてくる

日本ではあまり馴染みのないアメリカンフットボールの話である。

高校生のアメリカンフットボール国際親善試合があると、アメフトのお膝元であるアメリカの高校選抜よりも、日本の高校選抜のほうが強いのだ。本場をしのい でしまうという、これは驚くべき結果である。しかしアメリカ側はその結果に落胆もしなければ、ムキになることもない。負け惜しみでもなく「アマチュアの結 果でしょ」と言い切ってしまう。現に日本が強いのは高校生までの話で、そのアメフトの高校生選手達が20歳を超え、大学・社会人レベルに達したときには、 日本のチームはアメリカにまるで歯が立たなくなってしまうのだ。

何故こんなことになるかというと、アメリカンフットボールの全米高校選抜チームといっても、アメフトを専門でやっている(アメフトしかやっていない)高校 生は1人もいない。OFはレスリングが得意な選手であったり、QBは槍投げの全米チャンピオンだったり・・・日本の「運動部」では考えられないチーム状態 なのだ。それだけアメリカの高校生は色々なスポーツに親しんでいる。1つの競技に固執しない。となると日本人に馴染みの薄いアメリカンフットボールでも、 小学生のころから毎日同じ競技、高校の部活でもアメフトばかりやっている日本の高校生選抜チームのほうが技術的にははるかにレベルが高いので勝つことがで きる。しかし高校生の時点で特定の競技しか練習していない日本チームのその後の伸びしろはまったく期待できず無残なものだ。対して、子供のころから複合競 技で鍛え上げたアメリカの選手達がその後、大学−プロと専門競技を選択し技術を培っていくと、とても日本人には太刀打ちできないレベルへと変貌していく。 彼らが自分の専門競技を選択するのは大学入学時、トップアスリートに至っては大学時代でさえベースボールとバスケットボールを掛け持ちするような選手もい る。

子供のころから特定の競技のみを練習し、高校生の時点で小手先の技術が完成してしまった日本人と、いろいろなスポーツに親しみ運動の基礎であるアジリティ とコーディネーションを積極的に練習していたアメリカのアスリート達と間には、埋めることのできない身体能力の差ができてしまっているということなのだ。

これは小学生期のスポーツ指導者に是非理解してほしい事実だ。小学生のうちから特定のスポーツをみっちり仕込んでいけば、それなりに技術が向上し勝てる チームが作れることは間違いない。しかし小手先の技術だけで競技を行っている小学生が、その後の中学、高校、成人へと成長するにつれて、どのぐらい伸びる かは底が知れている。幼稚園児が1つのことにとんでもなく執着し、車の車種を全部覚えてしまったり、電化製品の品番を全部覚えてしまったり、高校数学を覚 えてしまったり・・・そんな例は数多くあるが、その子達が「理解しているか」といえばそうではなく「覚えている」だけで、残念ながら成長した後、そのまま その分野の専門家になることはないだろう。

身体の発達も同じことで、特定の競技の動作を「覚えさせる」のではなく、もっと広い範囲の運動そのものを身体で「理解させる」ほうが重要なのだ。小学生期 に
「なに、サッカーが苦手?お前は野球の部員なんだからサッカーは苦手でもいい」
という考え方は、その子の将来において害になる。
「なに?野球はできるく せにサッカーができないって?小学生のくせにそんなことでどうする?」
くらいの発想が小学生期の指導者に最も必要なことである。





〔3〕中学生期

ティーンネイジ前半にあたる中学生期に最も発達するのは循環能力である。これは一般的に考えられている持久力とは若干異なる。また、この時期から筋肉が著 しく発達するため、正しい筋力トレーニングの基本を開始するべきである。


1)循環能力の成長がピークに

12〜14才は呼吸循環系の発達がピ−クとなり、持久力、粘り強さを養うのに最適な年代といわれている。

しかし、たんに持久力とだけ考えると長距離走ぐらいしか想像できないかもしれないので、そんな誤解がないように持久力ではなく「循環能力」として考えたほ うが正確に理解しやすいと思われる。持久力という表現は、長距離を走るスタミナなどパフォーマンスの維持能力を言い表した運動の結果論であって、体内の機 能的特性を現している言葉ではないからだ。

例えば一般的に言われる持久力と瞬発力は相対するものであるため、中学生が5年後の成人にかけて筋力トレーニングを行い強靭な肉体を作り上げたい、と思っ ているのなら中学生の時期に持久力トレーニングは必要ないということになってしまう。

持久力という言葉を「循環能力」と置き換えるとするならば、筋力トレーニング中、あるいは競技中の筋肉への栄養供給の能力として、やはり中学生のうちに循 環能力を向上させておくことが有意義だと理解できるはずだ。

日本人は持久走が好きだ。しかし持久力と循環能力に言い換えたように、正しく循環能力を鍛えるためには、持久走だけではいけない。持久走とは、おなじみの 「長い距離をノンストップで走りきる」トレーニングだが、それは「マラソン」という競技であって、ほかのスポーツの基礎になる循環能力とは異なるのだ。中 学生期に最も発達する循環能力を、持久力=持久走の呪縛から解き放つ必要がある。攻守が分かれている野球やバレーボールはもちろん、プレーが連続するバス ケットやサッカーでさえ、ノンストップでペース配分をして走り続けているわけではないからだ。

マラソン以外の多くの競技に必要な循環能力は、インターバル走のような断続的な瞬発力を発揮する能力を養ったほうが、より効果的であろう。例えば全力で短 距離をダッシュして20〜30秒ほど休み、またダッシュして20〜30秒ほど休み…タイムを計測して、1本目と10本目のタイムの差を縮めることを目的と した循環能力のトレーニングは、各種競技における本当の持久力といえるわけである。

 

2)成長期の筋力トレーニング

またこの時期の筋力トレーニングによって骨の成長が止まる、というのはよく言われる話であるが、本当なのだろうか?筋力トレーニングを行うことによって、 骨端軟骨の成長が押さえられ、骨の成長の妨げになるというのが根拠になっているようだが、筑波大学の教授の研究によって、「骨端線の成長は、筋肉が押さえ つけるパワーよりもはるかに強力である」したがって「筋力の発達によって骨の成長が物理的に押さえられることはない」という結論がだされた。

筋力アップによって骨端を押さえつけられることはない、とはいえ成長痛などに見られるように、成人と比べると骨腱構造(筋肉が骨に付着している部分)の不 安定さは無視できないため、障害を防ぐためにもマシンなどを使った荷重トレーニングは避け、自重トレーニングにとどめるのが望ましいといえるだろうが、筋 力トレーニングそのものが否ではないという結論なのだ。ただし、後の「トレーニングの害」でも述べるが、正しいトレーニングの方法、プログラムを行わなけ れば、成長を妨げられる結果になっても不思議ではない。

毎日腕立て伏せ100回、腹筋100回、など非科学的なプログラムでは、筋疲労ばかりが蓄積し、成長ホルモンの分泌異常を起こし、結果、成長を妨げる可能 性も否めない。

また昔の運動部にありがちな「雨の日は筋トレ」のような、不確定なプログラムで筋力向上の結果が得られるとも思えない。

(コラム「筋トレしても背は伸びる!」参照)
 

3)外人だからすごいのか?

筋力トレーニングといえば、例えばアメリカのアメフトの選手の鍛え上げられた筋肉を見て、日本人は「バケモンだ」「外人はすごい」と思いがちだが、果たし て「外人だから」すごいのだろうか?外国人でも一般の日本人よりも華奢な人間はたくさんいる。

この「外国人だから」という民族的コンプレックスを払拭するためには、日本人のスポーツに対する固定概念を覆さなければならない。

アメリカやオーストラリアはスポーツ科学が発展している。というよりも日本の内情と比較すると、欧米豪ではスポーツ科学が一般化している。一般の人間の身 体に対する関心、知識も、健康ブーム真只中の今日の日本よりもはるかにレベルの高いものである。

日本人は、あの化け物のような肉体を見てスクワット1000回、腕立て1000回のような猛烈な根性トレーニングをイメージしてしまうであろう。しかし、 そんな猛烈なトレーニングを繰り返したところであんな肉体は完成しない。完成しないどころか、そんな無計画で無謀な筋力トレーニングは故障する可能性が高 く、運よく故障しなくてもろくな効果が上がらない。

アメフトの20歳の選手の筋肉隆々な肉体が完成形だとすると、その強靭な肉体を作り上げるためには、成長期にあわせた計画的なプログラムで5〜6年はかか るといわれている。この「計画的」なという部分が日本のスポーツ界に最も欠けている要素なのだ。

ここで考えてみてほしい、20歳の選手の強靭な肉体を作り上げるのに5〜6年にわたる計画的な運動プログラムが必要なのだから、彼らは中学生のころから成 人に向けたトレーニングを行っているのだ。ニュージーランドのフットボールチームなどは、中学生のころからアスリートの卵として計画的な筋力トレーニング が指導されている。中学生に対して国家が予算をあて、フィジカル分野の専門家によって合理的にプログラムされた科学的トレーニングが指導されている。そし て彼らアスリートも中学生期から正しい知識を身につけ、将来にわたる筋力トレーニングの基礎を養うのだ。

全ては成人を完成形として、将来的なスポーツにおける国力を上げるためのプログラムであり、中高生時代のアマチュアでの勝利を目指している短絡的なトレー ニングではない。

この計画的な要素と、アスリート自身が正しいトレーニングの知識を教育され身につけるという要素が、日本のスポーツ界にもっとも欠けている部分なのであ る。

(コラム「ヤリ過ぎ注意!〜日本のアマチュアスポーツの危険」参照)

そんな事実を棚にあげて「外人だから」すごい、というのはあまりにも愚かな発想ではないか。




〔3〕高校生期

高校生期の前半は中学生期と同様、自重トレーニングが望ましい

17〜18歳になる高校二年生くらいになれば骨端軟骨は完全に骨化(成人の骨格が完成)してくるので、マシンを用いた加重トレーニングを行っても良い。

ただしマシントレーニングは荷重が大きいため、絶対に正しいフォーム、正しい方法、正しいプログラムに従って行わなければならない。特定の筋肉にコント ロールした荷重を加えるわけなので、効果が絶対的に大きくなる分、危険性も大きくなるというわけだ。

またマシンを用いた加重トレーニングは、中学生までに培った正しい自重トレーニングと筋肉に関する知識が基礎になるため、自重トレーニングを正確に行えて いない選手はマシンを使うべきではない。

自重トレーニングや筋肉のメカニズムを十分理解しているアスリートでも、マシンを使い始める最初の一ヵ月半は軽いWeight荷重でトレーニングを行うべ きである。

本書では、まず小学生と中学生の基礎があってこそ、高校生から成人アスリートのマシントレーニングが成り立つと考えている。またマシントレーニングの実行 は環境や諸事情(マシンをいつでも使える環境にあるか?マシンを置くスペースが自宅にあるか?など)にも影響されるうえ、より専門的になってしまうことか ら、本書の目的からやや外れるため、マシントレーニングの具体的な方法は割愛し、自重トレーニングを中心とした基礎に焦点を絞ることとする。

ただし本書の基礎は、マシントレーニングの基礎でもあるため、高校生から成人アスリートにとっても、必ず役に立つことを保証する。



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